ゾロナミ

LUNATIC PARTY

波の音が穏やかになってきた…

夜空が朝日によって空色へと変わって行く。
夜と朝の境目はいつも燃えている様なオレンジ色で、視覚からの刺激は温度を感じさせ、覚醒を促すには好条件だ。

メリー号の後方で、ゾロは自身の大きさと変わらないバーベルを、剣道の素振りをする様に頭上から一気に振り下ろして、一定の場所で止めてはまた頭上へと持ち上げる動作を繰り返していた。

バーベルを握る手は石をつないだ様に節くれてゴツゴツとし、腕も肩も堅くて厚くバーベルを振り上げるたびに筋肉が隆起して鍛え上げた身体を動かしている。
いったいいつから始めていたのだろうか、ゾロの身体からはシャワーを浴びてそのまま出た人の様に、大量の汗が伝い流れている。

波の音に紛れて、海鳥が甲板をたたく様な軽い靴音がした。
無機的な金属音とともにゾロは鍛錬を止めて、音のする方へと振り返った。

「おはよ。」
「よぉ…」

昨晩は甲板で飲み明かした。もちろん酒は一瓶では足りずに数本空けてしまい、今日の料理の下拵えの為に早起きをしたこの船の料理人の困った顔が思い出される。
「埋め合わせをすればいいわよ。」

わずかばかりの思
う事が表情から読まれてしまったのだろうか、ゾロの言葉にしにくい気持ちにナミは言葉で応えた。

朝の海風に吹かれてオレンジ色の髪がなびいている。露出の高い服がナミの身体をなぞるように揺れて、触れて流れていく…
ゾロは胸の中で、ちいさく、そんなに触れてくれるな。とつぶやいたが、都合良くは海風は止まるはずは無かった。

「もう充分よ。汗流してきたら?」

ゾロは深呼吸をしてナミを見つめると、右手で、首の後ろを支え軽く頭をふり無言で浴室へと向かいながらナミに情報を求めた。
「島が近いのか?」
「そうよ」

ゾロの行動の全てを見逃さないように見据えながらナミは、待っているわよ。ゾロ…とだけ言って船首へと向かった。

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