ゾロナミ

Baby Star

夏の気配がする島へと航路は進んでいる。
まとわりつく熱気と反比例した夜空の星空を見上げながら、芝生を張り巡らせた甲板にあぐらをかき夜の波の揺らめきと風に身をまかせている男が、いる。
年齢は二十歳前、海賊として修羅場をくぐり抜けたであろう身体は、平均的な男子よりかは厚みもありたくましくもみえるが、夜空を見上げる表情はどこか幼げでおぼつかなさそうに見えるのが魅力に思える。
調理場から拝借してきたのだろうか、酒瓶を厚めのガラスの杯に注いだ。
杯は2つある…彼は規則正しくグラスに酒を注いだ。
まとわりつく熱気も彼には楽しみのひとつではないのか、夜空の星を見つめながら呪文のようにささやく。
「おい、ナミ。」
夜の波に甲板がうねり海風が揺れた。
サクサクと芝生を踏む音がする。
「サンジくんは怒らないわよ」
白いサンダルが彼に近づいてくる。スラリと伸びた脚や歩くたびに揺れる腰が支える上半身は芸術的な絶妙なバランスを兼ね揃えて、見上げる男はいつも意味の無い嫉妬にかられるが、ナミには言わない男だけの秘密だった。
「あいつは関係ねぇ」
眉間に深く皺がよる。
「ヤキモチやいてる…」
少しかがんで男のそばにしなやかに腰かけると、まるで猫のようだと思いながら男は下唇をつきだすと酒をついだ杯をナミに渡した。
「ゾロ…」
夜の波がまたうねり甲板を揺らした。
「おう。」
いつからか、意味もなくこうしてささやかに杯を酌み交わす様になりそれが、自然なこととなりつつあった。
「ゾロ」
互いに杯を寄せて夜の波間にキンと祝福の音がする。
「ゾ.ロ」
張りのある声が徐々にゾロを包み込んで彼女の待ち望むことばを促す。
「誕生日、おめでとう…ナミ」
夜の帳に隠れようとしても、ゾロの体温は熱くなりナミに伝わる。
「もっと…」
すり寄るようにナミはゾロにねだる…互いの体温が混ざり共有している。
今は酒は二人にとって都合の良い言い訳にしかならなかった。
「のめよ。」
ゾロが再び杯を交わすと、ナミは短いため息と少しの笑みをたたえさらに互いの境界線を無くすかのように密着してゾロに今宵の酒をねだるのであろう。
夜空の星達はキラキラといつまでも二人を祝福している。
…これからも、ずっと。
- 了 -



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