Liвrary

靴と月と夜想曲

「さよなら。」落陽に告げた夜最初で最後の月が翔る

木箱を抱えた浮浪人が裸足で人波を走り裂く


足音響いたトンネル内
淡い橙が零れ落ちる

ぬかるむ地面に広げた素地
軋んだ木箱と靴磨き屋


握った一片の布切れで
丹念に靴を磨き始める

見下す視線は情けもなく
人間も月も嘲う


いっそこのまま消える事をこの世の誰が否定するのかと
考えると涙はもう止め処なくて両目が霞む



煙草を吹かした髭の紳士
無情に散らばる吸殻たち

磨いた革靴眺めながら
胸から放った縒れた紙幣


無言のまま深く頷いて
這う様紙切れ握りしめて

震える両手は止まらなくて絞る声で泣く靴磨き屋


死に方いくつも数えたけど自分で択べる筈もなくて

生きるのこんなに辛いならば産まれる前、神に断ったろう


仕方なく授った生命でも自分なり不器用に生きれたなら

木箱を抱えた浮浪人は
教会で掌を合わす


蝿捕る蜘蛛より役立たない自分はまだ井戸の底で

世界を知れない蛙でもなく足すら生えないお玉杓子


いっそこのまま消える事をこの世だれが否定するのかと
考えても涙はもう枯れたままで瞳を閉じてく

翌朝神父が辛い顔で
小さな少女の肩を抱く

「ごめんね。涙に気付けなくて」
神父が優しく髪を撫でる


[先頭ページを開く]
[指定ページを開く]


<<重要なお知らせ>>

@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
@peps!・Chip!!は、2024年5月末をもってサービスを終了させていただきます。
詳しくは
@peps!サービス終了のお知らせ
Chip!!サービス終了のお知らせ
をご確認ください。




w友達に教えるw
[ホムペ作成][新着記事]
[編集]

無料ホームページ作成は@peps!
無料ホムペ素材も超充実ァ