小説
魔法解き(BUMP)

私は動けません。
私は椅子に座っています。
私は話せません。
私は彼らを見ています。
私は彼らの会話を聞いていました。


−−−−魔法解き



「───────ぉ、────すぅ。」
「────く?」
「────だよ。」
「真夜──の夢。」

ぼかしがかかったように聞こえた会話が霧が晴れるように聞き取りやすくなる。
「────ぇど、オレその曲弾けるよ。」
「マジで!?弾いて!弾いて!」
「あー、でも歌詞間違うかも。」
と言って4人のうちアコギを抱えた1人の人が弾き始めた。
彼は長髪&細身で女の人のようだった。

聴いたことのあるメロディーだった。
喉につっかえていたものが解けていく。
体に巻きついていたものが解けていく。
懐かしいメロディーだった。
私の目から何かが溢れ出した。
涙だ。
彼は私を見て弾くのをやめた。
他の3人もこっちを見た。
何か言おうと焦る私に長髪の人が微笑んだ。
「おはよう。お人形さん。」

魔法が解けたのか、私は新しい夢を見ているのか、はたまた違う魔法にかかっているのか分からない。

彼は歌った。

君に会いに来たんだよ。
       乾ききった世界まで
僕を知って欲しくて


   来たんだよ。

End

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